更新日:2024年3月28日
シンナーとは?用途や種類、選び方、使用上の注意点など基本事項を徹底解説
塗装作業に欠かせない「シンナー」。シンナーとはいわゆる「うすめ液」であり、塗料の粘度を下げることで作業をしやすくする役割があります。
シンナーにはいろいろな種類があるため、どれを選べば良いかわからず悩む方は多いのではないでしょうか。
この記事では、シンナーの用途や成分、主な種類と使い方について紹介します。シンナーを使う際の注意点や選び方のポイントも解説するため、シンナー選びの参考にしてください。
シンナーとは
シンナーは、英語で「薄める」という意味の「thin」に接尾辞「er」がついた「thinner」という英単語です。文字通り「薄めるもの」という意味で、塗料を薄めるための有機溶剤をさします。
塗料に含まれている樹脂を薄めることで、塗装作業をしやすくする役割があり、塗装作業には欠かせない存在です。適切に塗料を薄めないと、塗装の仕上がりや持ちに影響が出るため、正しく希釈を行う必要があります。
シンナーの用途
シンナーは、塗料ごとに専用のものが販売されています。溶剤系・合成樹脂塗料を薄める際は塗料用シンナー、ラッカー塗料にはラッカーシンナーを使用する必要があります。
用途に適したシンナーを選ばないと、塗料が剥がれたり分離したりする可能性があるため注意しましょう。それぞれの種類についてはのちほど詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
シンナーの成分
シンナーの種類によって配合されている成分は異なりますが、主に以下のようなものが配合されています。
- 酢酸エチル
- トルエン
- キシレン
- イソプロピルアセトン
シンナーの多くが第四類の危険物に該当するため、使用時は安全データシートをしっかりと確認する必要があります。
また、シンナーに含まれる有機溶剤には強い匂いを持つものがあり、吸い込んでしまうと人体に悪影響を及ぼす可能性があります。使用時には送気マスクや防毒マスクを着用したり、換気をして吸い込まないようにしたりするなど、十分な対策をとって安全に作業しましょう。
塗料と溶剤の関係
そもそも「塗料」は、顔料や合成樹脂などの塗膜形成成分と、有機溶剤か水のような揮発成分で構成されます。水が含まれているものが「水性塗料」、溶剤が含まれているものが「溶剤塗料」です。
一方で、溶剤は塗料を薄めて塗装できるようにする役割があります。溶剤は塗布後に揮発しますが、塗料に含まれる塗膜形成成分は乾いて残ります。このように、溶剤で塗料を薄めることで塗装しやすくなり、作業の効率化に繋がります。
シンナーの種類
シンナーは主に、以下のような種類があります。
- ラッカーシンナー
- その他の合成樹脂シンナー
- 塗料用シンナー
- 洗浄用シンナー
それぞれの特長を詳しく解説します。
ラッカーシンナー
ラッカー系塗料を薄めたり洗浄したりするために使われるシンナーです。ラッカー塗料に専用のシンナー以外を使うと、希薄できない、乾きにくくなるなどトラブルに繋がるため注意してください。
ラッカーシンナーは、溶解力が強く早く乾燥するという特長があります。アルコール・トルエン・キシレンなどを主成分としているため、強い匂いがする場合が多いです。
その他の合成樹脂シンナー
ウレタンシンナー、エポキシシンナー、アクリルシンナー、メラミンシンナーなど、樹脂ごとに希釈用シンナーが販売されています。
樹脂の性質に合わせて成分が変えられているため、それぞれ適した専用シンナーを使うことで、効率的に作業をおこなえます。専用シンナーを使用しないと、塗料の品質が劣ってしまう可能性もあるため注意してください。
塗料用シンナー
塗料用シンナーは「トシン」「ペイントうすめ液」と呼ばれることがあり、ホームセンターでも購入できます。ミネラルスピリットやミネラルターペンと呼ばれる「脂肪族炭化水素」を主成分としています。
塗料用シンナーは、ラッカーシンナーと比べると乾くのがやや遅めですが、油性塗料を溶かす場合は塗料用シンナーが適しています。
洗浄用シンナー
表面の汚れを落とすような洗浄を目的とした洗浄用シンナーは、溶解力が強い特長があります。希釈用シンナーを洗浄用シンナーとして使うこともできますが、塗料との相性がよくないケースもあるため注意しましょう。
洗浄を目的とする場合は、専用の洗浄用シンナーを使用することでスムーズに洗浄できます。
シンナーの選び方
シンナーを選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。
- 用途で選ぶ
- 作業時の季節や気温で選ぶ
それぞれのポイントを詳しく解説します。
用途で選ぶ
前述したとおり、シンナーは塗料に使用されている樹脂に合わせて、専用のものを使用する必要があります。
ラッカー塗料にはラッカーシンナー、エポキシ樹脂塗料にはエポキシシンナーのように、用途に合わせて専用のものを選びましょう。用途に合った専用のものを使用しないと、シンナーの効果を十分に発揮できない可能性があります。
作業時の季節や気温で選ぶ
作業時の季節や気温によって、塗装の仕上がりに違いが出ます。シンナーには、春・夏・秋・冬用と使用推奨季節が定められているものもあるため、使う季節に応じて選びましょう。
また、高温多湿時にシンナーを使用すると、発泡やひび割れ、塗料の密着不良などのトラブルが起こる場合もあります。
製品に記載されている使用上の注意には、温度に応じた使用方法や上塗り可能時間などが書かれています。事前に製品説明書をしっかりと読んでから作業を行いましょう。
シンナーの使い方
シンナーは、希釈方法や処分方法など使い方をしっかり把握して使用することが大切です。ここでは、希釈方法や塗装具の洗浄方法、シンナーの処分方法を解説します。
シンナーの希釈方法
どの道具を使って塗装するかで、シンナーの希釈率が決まります。主な道具は、刷毛・ローラー・エアスプレーの3種類です。また、希釈方法は商品によっても異なるため、使用する塗料の製品説明書を必ず確認しましょう。
希釈率は10〜30%程度が一般的です。希釈率が低いと粘度が高く塗りにくくなってしまいます。逆に、希釈しすぎると塗料が薄まりすぎて透けてしまうなど仕上がりに影響が出るため、製品説明書を見ながら適切な希釈率で使用してください。
塗装具の洗浄方法
作業後、使い終えたハケやバケツなど使用した道具の洗浄時にもシンナーを使います。塗装具の洗浄が十分に行われておらず塗料が残っていると、次回の塗装時にムラができてしまう可能性があり、仕上がりに悪影響が生じる可能性があります。
洗浄時には、界面活性剤が入っているハケ洗い専用のシンナーを使用するのもおすすめです。道具の洗浄に特化しているため、汚れをしっかりと落とせます。
なお、洗浄時は必ず屋外で作業を行ってください。揮発したシンナーを大量に吸い込むと、急性中毒になる可能性があり大変危険です。作業の際はマスクを着用するなど安全対策を講じましょう。
シンナーの処分方法
シンナーを処分する際は、原則自治体の方針に従う必要があります。ここでは、処分方法の例を紹介します。
残ったシンナーは、新聞紙や布に染みこませてしっかり乾燥させ、可燃ゴミとして処理します。なお、作業をする際は換気の良い場所で行いましょう。大量にシンナーが残ってしまった場合は、専用処理剤を使用して固形にしたのち処理してください。
シンナーを使う際の注意点
続いて、シンナーを使用する際の注意点を解説します。
- 安全データシートを確認してから使う
- 屋内で作業する場合は換気を適切に行う
- 作業時はマスクや手袋などの防具を着用する
それぞれの注意点を詳しく解説します。
安全データシートを確認してから使う
シンナーの多くは第四類の危険物に該当します。そのため、使用する際には安全データシートを必ず確認してから作業を行う必要があります。適用法令、危険有害性を把握したうえで使用しましょう。
作業中には、取り扱う有機溶剤の区分の表示などを明確に行い、関係者以外の人が作業場に立ち入らないように管理が必要です。
またシンナーを保管する際も、安全データシートに記載されている取扱いおよび保管上の注意を守ってください。
屋内で作業する場合は換気を適切に行う
シンナーは、密閉空間で使用すると成分が充満してしまいます。風通しの良い屋外で使用するか、屋内の作業では換気を適切に行ってください。窓を開ける、換気扇を回すなどの対策があります。
シンナーを吸い込んでしまうと、頭痛や吐き気、めまい、シックハウス症候群を引き起こす場合があります。また、シンナーは引火性があるため、火の近くでは絶対に使用しないでください。
作業時はマスクや手袋などの防具を着用する
シンナーは人体にとって有害な液体であるため、作業をする際は、マスクや手袋などの防具を着用する必要があります。送気マスク・防毒マスクを使用し、シンナーを吸入してしまうのを防ぎましょう。
また、シンナーは油脂に溶ける性質があるため、皮膚から体内に侵入する可能性があります。夏場であっても肌が出ていないように、露出のない服装を選んでください。
まとめ
シンナーは、塗装をする際に欠かせない有機溶剤です。塗料の成分によって、使用するシンナーは異なります。シンナーを選ぶ際は使用用途によって選ぶほか、作業時の季節や気温で選ぶことも大切です。
シンナーに含まれる有機溶剤の種類によっては、人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、シンナーを使用する際は換気を十分に行い、マスクや手袋、長袖長ズボンで体を守りましょう。
シンナーを正しく活用することで、作業を効率よく進められます。この記事で紹介したシンナーの選び方や種類も参考に、ぜひ使いやすいシンナーを見つけてください。